名詞
完備
数学における完備性 は、様々な場面においてそれぞれの対象に関して特定の意味を以って考えられ、またそれぞれの意味において完備 でない対象に対する完備化 (completion) と呼ばれる操作を考えることができる。complete は「完全」と訳されることもある。実数の完備性: 実数の完備性は実数を公理的に定義する際に必要とされる性質の一つ。この場合の完備性は、実数全体の成す集合 R を距離空間と見た場合の完備性、あるいは R を半順序集合と見た場合の完備性の何れの意味とも取ることができる。
完備距離空間: 距離空間が完備であるとは、その空間内の任意のコーシー列が収束するときにいう。
完備一様空間: 一様空間が完備であるとは、その空間内の任意のコーシーネット(コーシー有向点族)が収束するときに言う。あるいは同じことだが、その空間内の任意のコーシーフィルターが収束するときに言う。
完備測度空間: 測度空間が完備であるとは、その任意の零集合が可測であるときにいう。
環の完備化: 可換代数学において(イデアルの冪によって定義される位相を考えるとき)イデアルによる可換環の完備化の概念が定義される。
より一般に、任意の位相群を開部分群の減少列において完備化することができる。
完備統計量: 統計学において統計量が完備であるとは、期待値が0となる不偏評価子が許されないことを言う
完備圏: 圏論において圏 C が完備であるとは、小さい圏から C への任意の図式が極限を持つときに言う。双対的に、そのような図式が余極限を持つとき余完備であるという
順序集合論やそれに関連する束論や領域理論のような分野でいう完備性は、一般にある種の順序集合における上限や下限の存在に言及するものである。この意味での完備性を持つ概念として完備ブール代数、完備束、完備半順序集合 (cpo) などは著しい。またさらに、順序体が完備であるとは、その体の中に上界を持つ任意の空でない部分集合が上限を持つときに言う(これは順序集合論の言葉で言うと有界完備性に相当)。完備順序体は同型の違いを除いて実数体ただ一つである(この完備順序体は、束にはなるが完備束にはならないことに注意)。
完備リーマン多様体
完備代数多様体: 代数幾何学において代数多様体が完備であるとは、それがある種のコンパクト性に類似の性質を満足することを言う。
(出典: 完備 - Wikipedia)